フットニスタ、清澤の
「しあわせな、あし」 日記
2024/05/27
江戸時代の歩き方の不思議 ~右手・右脚を一緒に前に出して歩けますか?~
みなさま、ごきげんよう。 素敵なフットライフをお過ごしでしょうか。
今回は少々よもやま話を。どうぞ、ゆるりとお楽しみを。
目次
1:江戸時代までの歩き方は、[右手右脚][左手左脚]が一緒に前に出る?
突然ですが、みなさまは歩く時は、[右手左脚][左手右脚]がワンセットですね?
これが現代の一般的な二足歩行のはずです。
しかし、江戸時代までの日本人は、[右手右脚][左手左脚]がワンセットだったと言われています。
つまり、右手が前に出ている時は脚も右脚が前に出るわけです。
今となっては、この歩き方はアニメなどで緊張している人物の描写として見かけるくらいですから、つまりは“非常時”なわけです。
それが、ほんの150年前までは一般的だったとは驚きです。
この[右手左脚][左手右脚]がワンセットの歩き方を一説では「ナンバ歩き」と呼ぶようです。
私がこのナンバ歩きに興味を持ったのは小学生のころでした。
私は、小学校に上がると同時に剣道を習い始めましたが、まさに剣道の基本的な構えは右手右脚が前なのです。
入門当時、ひたすら構えやすり足の稽古ばかりしている頃、先生が「これが昔から日本人がとってきた姿勢だ。」「一番体幹がどっしり重く安定するのだ。」と言われたことを今でよく覚えています。
そして、剣道だけではなく、他の武道でも同じように[右手右脚][左手左脚]のものがあります。
さらには歌舞伎の動きでも同じものがあります。
江戸時代に描かれた浮世絵の人物も同様の歩き方をしています。
なんでしたら・・・
かつての佐川急便のマークとして用いられていた飛脚(最近見かけませんね。)も同様です。
みーんな、[右手右脚][左手左脚]なのです。
これらから見るに、やはり日本人は[右手右脚][左手左脚]を同時に動かす習慣だったことは確かなようです。
とても興味深いですね。
2:なぜ、[右手右脚]・[左手左脚]が同時なの?
一説では日本人の服装や生活様式が要因だといわれています。
かつて着物を着ていた日本人は腰周りが固定されていることや、裾が乱れやすいことから、
歩幅を小さく、右手右脚、左手左脚を同時に動かし、つま先から着地していました。つまり、ナンバ歩きは、身体をひねらず、正面をむいたまま、頭の上下運動もほぼない、歩き方なのです。
そして、もうひとつ。
かつての日本は地面が土であり、そして起伏の多い地形、そんな中を徒歩移動しなければいけないためにナンバ歩きが都合が良かったとも言われています。
ナンバ歩きの「ナンバ」は「難場」だという説もあるくらいです。
足元が悪い中でいかにして安全に効率よく移動するかの自然の摂理なのかもしれませんね。
この説を裏付けるものとして、日本人がナンバ歩きを止め、現代の歩き方に以降した転機は文明開化でもたらされた「洋装」「道の舗装」などだと記す書物もあります。
3:[右手右脚]・[左手左脚]の歩き方は体に良いの?
実は、ナンバ歩きは身体への負担が少ないと言われているのです。
身体をひねらないこと、歩幅が小さいこと、つま先から着地することから、特に脚腰への衝撃が少なかったと言われています。
先述の武道の構えや所作からも分かるように体の中心がぶれにくく、どっしりとお安定することは確かです。
実際にナンバ歩きをしてみると、現代の歩き方がいかに体をひねりながら歩いているか、ややもするとバウンドしながら歩いているのかがよく分かります。
かつて日本人は江戸から京都まで約500kmを10日から15日程度で歩くというから驚きです。
まず、この道のりを当然のように歩こうとする感覚にも驚きですが、完歩できることは何より素晴らしい運動能力です。
東海道の起伏を完歩するには、やはりナンバ歩きが適していたのだろうと思えますね。
現代のように身体をひねって歩き、かかとから着する歩き方では、気力はあっても途中で足腰が立たなくなるのかもしれません。
4:現代の私達はどう歩くべき?
いくらナンバ歩きのメリットを学ぼうと、現代でこの歩行をするのは不自然というものです。
不自然以前に、もうすっかり身体に馴染んだ、今の歩き方を変えるのも無理なはなしですね。
では、現代の私達がここから学ぶ事は何でしょうか?
やはり、まっすぐ立ち、足裏重心を均一に保ち、現代人にとって最良の姿勢を心がけることでしょう。
それを思えば、
靴を正しく選び、インソールを活用して足裏重心をコントロールし、かかとにかかる衝撃を和らげることは、現代の私達の足・脚・身体にとって大切な事だと納得ですね。
いかがでしたでしょうか。
江戸人と現代の私達の歩き方にこれほどの違いあったことを思えば、現代人の歩き方の個人差など何も驚くことはありませんね。
立ち方、歩き方は十人十色です。
是非、みなさま、自分にあったフットケアを大切にしてください。
最後に、、、
余談ではありますが、私は子供の頃から「60歳までに日本橋から京都へ歩いて行ってみたい」と本気で考えています。
10代の頃は神保町で江戸時代の地図を買ってもらい、現代の地図を見比べてできる限りかつての東海道を、無理なエリアは迂回ルートを探し地図に色を塗って遊んでいました。
今、この年齢になり、実はまだ諦めていません。
この夢を実現するにはあと5年以内が勝負だろうと考えています。
そのためには、ひと月ほど会社をお休みしなければ・・・
そして、関西方面への出張で東海道新幹線に乗るたびにかつての江戸人たちが、徒歩で10日~15日かけていた道のりを2時間半で移動してしまうことに、何ともいえない気持ちを抱えます。
みなさまはいかに。
また近々おあいしましょう。
ごきげんよう。
筆者:清澤 舞(きよさわ まい)
美容トレーナーとしての活躍中のビューティ&ヘルスケアのスペシャリスト。 キャリアは、美容皮膚科、化粧品メーカー、化粧品の処方開発、美容専門学校講師、ヘア&メイクアップなど多岐。 美容理論を分かりやすく伝え、美容初心者から専門家までファンが多い。フットケアや足全般の知識も豊富で、ドクター・ショールの「フットニスタ」としてコラムを執筆中。(※フットニスタ=足のケアのエクスパート)